決済、権利行使、割当の全フロー
この回で学ぶこと
満期の消滅・権利行使・割当を整理し、イン・ザ・マネーのオプションが勝手に株のポジションになるのを避ける
満期に起きうる三つの結末
前の回で、プレミアムが本質的価値と時間価値から成ることを見ました。実際にオプションを持ったり売ったりしたあとは、先にこれを聞きます。満期に何が起きるか。勝手に株になるのか。口座からいきなり大金が引かれるのか。
オプションの満期には、結末は三つしかありません。
消滅: 本質的価値がなく、契約は終わる。
権利行使(Exercise): 買い手が履行を求める。
割当(Assignment): 売り手が履行を強いられる。

この三つを分けておけば、満期当日のサプライズは減ります。一つずつ見ます。
ポイント: オプションの満期は「勝手に消える」ほど単純ではない。まず三つの可能性を覚える。消滅、権利行使、割当。
消滅:いちばん多いケース
満期時点で、コールの行使価格が株価より高い、またはプットの行使価格が株価より低いなら、そのオプションに本質的価値はありません。つまりアウト・オブ・ザ・マネー(OTM)です。買い手は行使せず、オプションは消え、プレミアムは売り手のものです。
買い手にとっての損失は、当初払ったプレミアム全部。売り手にとっては理想の結果です。義務は消え、保険料が残る。
ポイント: ほとんどのオプションは最終的に消滅する。これが売り手の「家賃取り」が長く成り立つ理由の一つ。
権利行使:買い手が履行を求める
買い手には、満期に売り手へ行使価格での履行を求める権利があります。アメリカン型なら、満期前の行使もできます。
コールの買い手が行使: 行使価格で 100 株を買う。口座に十分な資金が要る。
プットの買い手が行使: 行使価格で 100 株を売る。口座に株がなければ空売りになるか、証券会社のルールで処理される。
米株の多くの証券会社は、イン・ザ・マネー(ITM、値内)のオプションを満期に自動行使します。本質的価値が一定額を超えていれば、手動で何もしなくても、株のポジションに変わることがあります。

だから「満期で勝手に消える」は、本質的価値のない契約にだけ当てはまります。ITM のオプションは満期に 100 株になり、それに見合う現金や保有株を占有し得ます。
ポイント: ITM のオプションは満期に自動行使され得る。株を持ちたくないなら、最終日まで引きずらない。
割当:売り手が履行を強いられる
売り手であるとき、買い手が行使を選べば、あなたは割当(Assignment)を受けます。買い手には選択権があり、売り手は義務を果たさねばなりません。
売ったのがコールなら、割当後は行使価格で 100 株を売らねばなりません。口座に株がなければ空売りになります。
売ったのがプットなら、割当後は行使価格で 100 株を買わねばなりません。現金を用意しておきます。

割当は満期近くで起きることが多いですが、アメリカン型なら理論上は早期にも起きます。売り手は「今回は履行しない」を選べません。
ポイント: 買い手は対価を払って権利を買い、売り手は対価を受け取って義務を負う。割当を受けたら、行使価格で 100 株を買うか売るかしなければならない。
アメリカン型とヨーロピアン型
行使できるタイミングも分けます。米株の個別株オプションの多くはアメリカン型:満期前のどの取引日でも、買い手は行使を申請できます。指数オプションの多くはヨーロピアン型:満期日にしか行使できません。

初心者は一行で足ります。ソフトに出てくるアップルやテスラのような株式オプションはアメリカン型です。早期割当は理論上あり得ます(頻度は高くない)。
ポイント: 米株の株式オプションはアメリカン型。満期前にも割当があり得る。まずこれを覚える。
初心者がいちばん踏みやすい穴
流れを見たうえで、満期日に爆発しやすいのはこの三つです。
ITM のオプションを最終日まで持ち、十分な資金や株を用意せず、自動行使のあとに口座へ突然 100 株が増える(または減る)。
売ったオプションを完全に忘れ、満期に突然割当を受け、現金や株が拘束される。
自動行使のルールを知らず、「満期で勝手に消える」と思い込む。
ポイント: 株への受け渡しをしたくないなら、ITM のポジションを満期まで引きずらない。売り手は、履行に必要な現金や保有株を先に残しておく。
まとめ、次は Delta を見る
満期前に、この四項目を一度チェックします。ITM かどうか、十分な資金や株があるか、早めに決済すべきか、自動行使のルールは何か。

実務の提案:
買い手で、株への行使をしたくないなら、満期前に自分で決済する(オプションを売る)。
売り手なら、起こり得る割当に対して十分な現金や株があることを確認する。
満期当日(とくに金曜日)は、自分のポジションを特に注意して見る。
この回で一番大事な一文: オプションの満期は「勝手に消える」ではない。ITM なら株のポジションになり得て、売り手は強制履行され得る。
決済が見えたら、次はプライシングでいちばんよく使う数、Delta です。株が 1 ドル動いたときオプションがだいたいどう動くかを教えてくれ、この契約が最終的に ITM になるおおよその確率も見積もれます。
先にこの三文を確かめる
次の回の前に、この三問を通す。飛ばしてもよい。
1.権利行使と割当は、同じ出来事の買い側と売り側だ。
2.株式オプションは満期に必ず現金決済で、株は出てこない。
3.インザマネーのまま満期を迎えると、ボタンを押さなくても自動行使や割当が起き得る。